複数国籍と日本の不動産所有

複数国籍・二重国籍を持つ方が日本で不動産を購入する際の法的な位置づけ、住宅ローン審査、相続問題、2026年の国籍開示義務化について最新情報をもとに詳しく解説します。購入前の準備から税務対策まで完全網羅。
複数国籍と日本の不動産所有:二重国籍者が知っておくべき全知識
日本と他国の国籍を持つ「複数国籍者」にとって、日本での不動産購入は特有の疑問や不安が伴います。「日本国籍も持っているけれど、外国人として扱われるのか?」「住宅ローンは組めるのか?」「相続はどうなるのか?」——こうした疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、複数国籍・二重国籍を持つ方が日本で不動産を所有する際の法的な位置づけ、購入手続き、税務、そして2026年から始まる新しい制度について、最新情報をもとに詳しく解説します。
日本の国籍制度と複数国籍の現状
日本の国籍法では、原則として重国籍(複数国籍)は認められていません。18歳に達する前に重国籍となった場合は20歳まで、18歳以降に重国籍となった場合は重国籍になった時から2年以内に、いずれかの国籍を選択する義務があります。
しかし実際には、外国籍の放棄は努力義務にとどまり、罰則規定がありません。そのため、アメリカやカナダ、ブラジルなど二重国籍を認めている国の国籍を持つ方は、事実上日本国籍と外国籍の両方を保持しているケースが多く存在します。日弁連の調査によると、このような「事実上の二重国籍者」は日本国内に相当数存在するとされています。
在留資格・ビザについて詳しく知りたい方は「在留資格・ビザと不動産購入」もご覧ください。
複数国籍者の不動産購入:法的に可能か?
結論から言えば、複数国籍者は日本で自由に不動産を購入できます。
日本には外国人の不動産購入を直接制限する法律はなく、国籍に関係なく土地・建物の所有権を取得することが可能です。これは日本国籍を持つ二重国籍者はもちろん、外国籍のみの方にも同様に適用されます。PLAZA HOMESによると、外国人の所有権は日本人と同等であり、居住用でも投資用でも制限なく購入できます。
つまり、二重国籍者は以下のいずれの立場でも不動産を購入可能です:
- 日本国籍を使う場合:日本人として購入(最もシンプル)
- 外国籍を使う場合:外国人として購入(在留資格が必要な場合あり)
- 日本に住民票がない場合:非居住者として購入(追加の手続きが必要)
非居住者としての購入方法については「非居住者が日本の不動産を購入する方法」で詳しく解説しています。
国籍の選択が不動産購入手続きに与える影響
複数国籍者が不動産を購入する際、どの国籍で手続きを進めるかによって必要書類や手続きが異なります。
| 項目 | 日本国籍で購入 | 外国籍で購入(居住者) | 外国籍で購入(非居住者) |
|---|---|---|---|
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 | 在留カード・パスポート | パスポート・宣誓供述書 |
| 住民票 | 必要(日本の住所) | 必要(日本の住所) | 不要(代替書類で対応) |
| 印鑑証明書 | 必要 | 必要(登録済みの場合) | サイン証明書で代替 |
| 外為法届出 | 不要 | 不要 | 必要(取得後20日以内) |
| 住宅ローン | 通常通り審査 | 永住権の有無で変動 | 原則困難 |
| 登記名義 | 日本名 | 通称名または本名 | 外国名 |
重要なのは、日本国籍を持っている場合は日本人として手続きを行うのが最もスムーズだという点です。住民票や印鑑証明書の取得が容易で、住宅ローンの審査でも有利になります。
不動産購入時の必要書類について詳しくは「不動産登記の手続きと必要書類」をご確認ください。
住宅ローンと二重国籍者の審査
住宅ローンの審査において、二重国籍者の扱いは手続き上どの国籍で申請するかによって大きく変わります。
日本国籍で申請する場合
日本国籍を持っている方が日本人として住宅ローンを申請する場合、通常の日本人と同じ審査基準が適用されます。収入、勤続年数、信用情報などが主な審査項目となり、国籍に関する追加要件はありません。
外国籍で申請する場合
一方、外国籍として申請する場合は、金融機関が以下の点を重視します:
- 永住権の有無:多くの銀行が永住権を条件としている
- 日本での居住期間:3年以上の居住を求められることが多い
- 在留資格の残存期間:返済期間をカバーできるか
- 勤務先と収入の安定性:日本企業での正社員雇用が有利
永住権なしでもローンを組める金融機関については「永住権なしで住宅ローンを組む方法」で解説しています。また、フラット35は外国人にも比較的利用しやすい住宅ローンの一つです。
二重国籍者は日本国籍を有しているため、日本人として住宅ローンを申請するのが最も有利です。ただし、海外での収入やクレジットヒストリーは日本の審査では考慮されない場合があるため、日本国内での信用情報の構築が重要です。クレジットヒストリーについては「住宅ローンとクレジットヒストリー」もご参照ください。
相続と複数国籍:適用される法律はどれか?
複数国籍者にとって最も複雑な問題の一つが相続です。国際私法では、被相続人の本国法(国籍国の法律)が適用されるのが原則ですが、二重国籍者の場合、どちらの国の法律が「本国法」となるかが問題になります。
日本の国際私法(法の適用に関する通則法)のルール
日本の法律では、重国籍者の本国法は以下の順序で決定されます:
- 常居所地法:国籍を有する国のうち、常に居住している国の法律
- 最も密接な関係がある国の法律:常居所がいずれの国籍国にもない場合
- 日本法:国籍の一つが日本である場合、原則として日本法が適用される
つまり、日本に居住している二重国籍者が亡くなった場合、原則として日本の相続法が適用されます。日本の相続法では配偶者と子が法定相続人となり、遺留分制度も適用されます。
一方、もう一つの国籍国の法律が「不動産所在地法を適用する」と規定している場合(アメリカの多くの州など)、日本にある不動産については日本法が適用されることになります。
相続税については「相続税と不動産評価」で詳しく解説しています。
2026年からの新制度:国籍開示義務化
Japan Timesの報道によると、日本政府は2026年度(2026年4月以降)から不動産登記時の国籍開示を義務化する方針を発表しました。これは高市早苗首相の経済安全保障政策の一環で、外国人による不動産取得の実態を把握することが目的です。
新制度の主なポイント
- 対象者:日本国籍を含むすべての不動産購入者
- 提出書類:パスポートまたは在留カードのコピーなど、国籍を証明する書類
- 情報の取り扱い:国籍情報は政府内部データとして保管され、公開の不動産登記簿には記載されない
- 遡及適用:既存の登記には適用されない(新規登記のみ)
二重国籍者への影響
この新制度は二重国籍者にとって注意が必要です。日本国籍で登記する場合は日本のパスポートを提出すれば問題ありませんが、事実上の二重国籍状態を政府に開示することへの懸念もあります。ただし、前述のとおり国籍情報は非公開であり、現時点では二重国籍を理由とした不利益処分は行われていません。
2026年以降の規制動向については「2026年以降の外国人不動産規制の展望」で最新情報をまとめています。
税務上の注意点:複数国籍者の特殊な状況
二重国籍者は税務面でも独自の課題に直面します。
居住者 vs 非居住者
日本の税法では、国籍ではなく居住地が課税の基準となります。日本に住所を有するか、1年以上居所を有する場合は「居住者」として全世界所得に課税されます。二重国籍者であっても、日本に住んでいれば日本の居住者として扱われます。
不動産関連の税金
| 税金の種類 | 居住者 | 非居住者 |
|---|---|---|
| 不動産取得税 | 通常課税 | 通常課税 |
| 固定資産税 | 通常課税 | 通常課税(納税管理人が必要) |
| 譲渡所得税 | 最大20.315%(長期) | 同額(源泉徴収あり) |
| 住宅ローン控除 | 利用可能 | 利用不可 |
| 相続税 | 全世界資産に課税 | 日本国内資産に課税 |
二重国籍者が特に注意すべきは二重課税のリスクです。日本とアメリカの二重国籍者の場合、アメリカは国籍に基づく課税(全世界所得課税)を行うため、日本の不動産所得や譲渡所得に対して両国から課税される可能性があります。この場合、二重課税防止条約の適用を受けることで二重課税を回避できます。
非居住者の税務については「非居住者の不動産税務」も参考にしてください。
実務上のアドバイス:スムーズな購入のために
複数国籍者が日本で不動産をスムーズに購入するための実務的なアドバイスをまとめます。
購入前の準備
- 住民票の確認:日本に住民登録があるか確認する。住民票があれば日本人として手続きできる
- 印鑑登録:まだの場合は早めに印鑑登録を済ませる
- マイナンバーカードの取得:不動産取引や確定申告に便利。詳しくは「マイナンバーと不動産取引」を参照
- クレジットヒストリーの構築:日本国内で携帯電話料金やクレジットカードの支払い実績を積む
専門家の活用
二重国籍者の不動産取引は通常よりも複雑なケースがあります。以下の専門家への相談を検討してください:
- 不動産エージェント:外国人対応の経験がある業者が望ましい。「日本の不動産エージェントとの付き合い方」を参考に
- 司法書士:登記手続きの専門家。「司法書士の役割と選び方」で詳しく解説
- 税理士:二重課税の問題に詳しい国際税務の専門家。「税理士の選び方」を参照
- 弁護士:相続計画や国籍問題について相談する場合
相続対策を早めに
二重国籍者の相続は複数の国の法律が関わるため、早めの対策が重要です。遺言書を作成する際は、日本法に基づく遺言と、もう一方の国籍国の法律に基づく遺言をそれぞれ作成しておくことが推奨されます。
よくある質問(FAQ)
Q: 二重国籍であることを不動産会社に伝える必要がありますか?
A: 法律上の義務はありませんが、手続きを円滑に進めるために伝えておくことをお勧めします。特に住宅ローンを利用する場合は、どの国籍で申請するか事前に決めておくとスムーズです。
Q: 二重国籍者は住宅ローン控除を受けられますか?
A: 日本に居住し、日本の住民票がある方であれば、国籍に関わらず住宅ローン控除(住宅ローン減税)の適用を受けることができます。詳しくは「住宅ローン控除の活用法」をご覧ください。
Q: 将来日本国籍を離脱した場合、不動産はどうなりますか?
A: 日本国籍を離脱しても、所有している不動産の所有権に影響はありません。外国人として引き続き所有・売却・賃貸が可能です。ただし、非居住者となる場合は税務上の変更点があります。
Q: 2025年以降、外国人の不動産購入が禁止される可能性はありますか?
A: 現時点で外国人の不動産購入を全面的に禁止する法案はありません。2026年度から導入される国籍開示義務は購入の前提条件ではなく、あくまで登記時の情報提供義務です。ただし、重要土地等調査法により、自衛隊施設周辺など特定の区域では土地利用に関する調査や届出が求められる場合があります。
まとめ
複数国籍・二重国籍を持つ方にとって、日本での不動産所有は法的に可能であり、適切な準備をすれば円滑に進めることができます。最も重要なポイントは以下の通りです:
- 日本国籍を活用して手続きするのが最もシンプルで有利
- 住宅ローンは日本人として申請すれば通常の審査基準が適用される
- 相続計画は早めに専門家と相談し、複数国の法律を考慮した準備を
- 2026年度の国籍開示義務化に備え、最新の制度変更を把握しておく
- 税務面では二重課税のリスクに注意し、条約の活用を検討する
不動産購入の全体像については「外国人が日本で不動産を購入する完全ガイド」もあわせてご参照ください。また、国籍別の注意点は「国籍別・日本で不動産を購入する際の注意点」で詳しくまとめています。
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