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国際相続:日本と海外の法律の適用

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
国際相続:日本と海外の法律の適用

国際相続における準拠法の決定方法を解説。日本の通則法第36条に基づく被相続人の本国法の適用、統一主義と分割主義の違い、相続税の課税範囲、2024年相続登記義務化の影響、必要書類と手続き方法まで外国人向けに詳しく説明します。

国際相続:日本と海外の法律の適用

国際相続とは、被相続人や相続人が外国籍である場合、あるいは相続財産が海外に存在する場合に発生する、国境を越えた相続のことです。グローバル化が進む現代では、外国人が日本に不動産を所有するケースや、日本人が海外に資産を持つケースが増加しており、国際相続の問題はますます身近なものとなっています。

国際相続では、「どの国の法律が適用されるのか」という準拠法の問題が最も重要なポイントです。日本と海外では相続に関する法律の考え方が大きく異なるため、適用される法律によって相続人の範囲や相続分、手続き方法が変わってきます。この記事では、外国人の日本不動産相続の基礎知識を踏まえながら、国際相続における法律の適用について詳しく解説します。

国際相続における準拠法の基本ルール

国際相続において最初に確認すべきことは、どの国の法律(準拠法)が適用されるかという点です。日本では、「法の適用に関する通則法」(通則法)第36条において、「相続は、被相続人の本国法による」と明確に定められています。

つまり、被相続人(亡くなった方)の国籍を持つ国の法律が、相続全体に適用されるということです。例えば、日本国籍の方が亡くなった場合は、たとえ海外に居住していたとしても、日本の民法が適用されます。逆に、アメリカ国籍の方が日本に不動産を所有していた場合は、原則としてアメリカの法律が準拠法となります。

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この準拠法の決定は、相続人の範囲や法定相続分、遺留分の有無など、相続の根幹に関わる問題を左右するため、非常に重要です。準拠法が異なれば、誰がどれだけ相続できるかが大きく変わる可能性があります。

反致(はんち)の問題

準拠法の決定をさらに複雑にするのが「反致」という概念です。例えば、アメリカ国籍の被相続人が日本に不動産を所有していた場合、日本の通則法ではアメリカ法が準拠法となります。しかし、アメリカの多くの州では不動産の相続については所在地法(日本法)を適用するとしています。このように、相手国の法律が日本法に「送り返す」場合、最終的に日本法が適用されることがあります。

統一主義と分割主義:各国の相続法制度の違い

国際相続を理解するうえで欠かせないのが、各国が採用する相続法制度の違いです。大きく分けて「統一主義」と「分割主義」の2つのアプローチがあります。

項目統一主義分割主義
基本的な考え方相続財産全体に一つの法律を適用財産の種類や所在地により異なる法律を適用
不動産の扱い被相続人の本国法を適用不動産所在地の法律を適用
動産の扱い被相続人の本国法を適用被相続人の住所地法を適用
採用国の例日本、ドイツ、イタリア、韓国アメリカ、イギリス、フランス、中国
メリット法律関係がシンプル現地の実情に合った処理が可能
デメリット現地法との乖離が生じる場合がある複数の法律が絡み手続きが複雑になる

日本は統一主義を採用しており、被相続人の国籍に基づき、相続財産全体に一つの法律を適用します。一方、アメリカやイギリスなどは**分割主義**を採用しており、不動産は所在地の法律、動産は被相続人の住所地の法律をそれぞれ適用します。

この制度の違いにより、同じケースでも日本側とアメリカ側で異なる法律が適用される「法の抵触」が生じることがあります。国際相続では、この違いを正確に把握したうえで手続きを進めることが不可欠です。

日本の相続法が適用されるケース

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日本法が準拠法として適用されるのは、主に以下のケースです。

被相続人が日本国籍の場合

被相続人が日本国籍を持つ場合、たとえ海外に長期滞在していたとしても、日本の民法に基づく相続が行われます。この場合、法定相続人の範囲は日本の民法で定められた配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹となり、法定相続分も日本法に従います。

反致により日本法が適用される場合

前述の反致により、外国国籍の被相続人であっても日本法が適用されるケースがあります。特にアメリカやイギリスなど分割主義の国の国民が日本に不動産を所有していた場合、不動産については日本法が適用される可能性が高くなります。

遺言で日本法を指定している場合

一部の国の法律では、被相続人が遺言によって準拠法を指定できる場合があります。被相続人が遺言で日本法の適用を指定していた場合、日本の相続法が適用されることもあります。

日本法が適用される場合の具体的な手続きについては、相続登記の義務化と手続き方法の記事も参考にしてください。

海外の相続法が適用されるケース

被相続人が外国籍の場合、原則としてその国の法律が準拠法となります。ここでは主要国の相続法の特徴を紹介します。

アメリカの相続法

アメリカでは州ごとに相続法が異なります。多くの州でプロベート(Probate)と呼ばれる裁判所の監督下で遺産を分配する手続きが必要です。また、分割主義を採用しているため、日本にある不動産については日本法が適用される可能性があります。アメリカには日本のような遺留分制度がない州も多く、遺言により自由に財産を分配できるケースが多いのが特徴です。

イギリスの相続法

イギリスも分割主義を採用しており、不動産は所在地法、動産は被相続人の住所地法が適用されます。また、プロベート手続きが必要で、人格代表者(Personal Representative)が遺産管理を行います。

韓国の相続法

韓国は日本と同様に統一主義を採用しています。韓国国籍の被相続人の場合、韓国の民法が適用され、法定相続分は日本とやや異なります。韓国法では配偶者に加算割合があるなど、独自の特徴があります。

中国の相続法

中国は分割主義を採用しており、不動産は所在地法、動産は被相続人の住所地法が適用されます。中国の相続法では、法定相続人の範囲が日本とは異なり、祖父母や外祖父母も第二順位の相続人に含まれます。

各国の法律の違いについて詳しくは、国際的な二重課税の回避方法もご覧ください。

国際相続における相続税の取り扱い

国際相続では、準拠法の問題とは別に、相続税の課税関係も大きな課題となります。日本の相続税は国籍に関係なく課税される場合があり、注意が必要です。

被相続人の居住地相続人の居住地課税対象
日本国内日本国内全世界の財産
日本国内海外(10年以内に日本居住歴あり)全世界の財産
日本国内海外(10年以上日本非居住)日本国内の財産のみ
海外日本国内全世界の財産
海外海外日本国内の財産のみ

非日本国籍者が日本の相続税の全世界課税を避けるためには、過去10年間日本国外に居住している必要があります。この「10年ルール」は2018年の税制改正で導入され、日本在住の外国人に大きな影響を与えています。

相続税の計算方法について詳しくは、相続税の計算方法と基礎控除の記事で解説しています。

国際相続に必要な書類と手続き

国際相続では、通常の相続手続きに加えて、海外の公的書類を取得・翻訳する必要があります。外国人が日本で相続する場合の必要書類は多岐にわたります。

外国籍の相続人に必要な書類

外国籍の相続人には日本の戸籍がないため、以下の代替書類が必要です。

  • 宣誓供述書(Affidavit):相続人の身分関係を証明する書類。在日大使館・領事館または公証人の前で作成
  • サイン証明(署名証明)印鑑証明書の代わりとなる書類。在外公館で取得
  • 在留証明書:海外在住者が不動産を相続する場合に必要。在外公館で発行
  • アポスティーユ認証:外国の公文書を日本で使用するための認証。1961年ハーグ条約に基づく

遺産分割協議の進め方

国際相続でも遺産分割協議は必要ですが、相続人が海外に居住している場合でも、全員が一堂に会する必要はありません。電話やメール、ビデオ会議などを通じて協議を行い、遺産分割協議書に順番に署名することが認められています。

遺産分割協議の詳細については、不動産の遺産分割協議と調停の記事もご参照ください。

2024年相続登記義務化と外国人への影響

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務となりました。この義務は外国に居住している相続人にも適用されます。

正当な理由なく登記を怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。外国人相続人にとっては、日本の法制度の変更を把握し、適切なタイミングで手続きを進めることが重要です。

相続登記の具体的な手続きについては、相続登記の義務化と手続き方法で詳しく解説しています。

国際相続を円滑に進めるためのポイント

国際相続を円滑に進めるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

事前の遺言書作成

国際相続のトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、遺言書を事前に作成しておくことです。日本の不動産については日本の方式に則った遺言書を作成し、海外の財産については現地の方式に合わせた遺言書を別途作成する「ダブル遺言」が推奨されます。

専門家への早期相談

国際相続は法律・税務・手続きのすべてが複雑になるため、相続専門の弁護士・税理士に早い段階で相談することが重要です。特に準拠法の判断や相続税の申告には専門的な知識が不可欠です。

生前贈与の活用

相続税の負担を軽減するためには、不動産の生前贈与を活用する方法もあります。ただし、国際的な贈与には各国の贈与税制度が関わるため、事前に専門家と相談することが必要です。

信託の活用

近年は信託を活用した不動産の承継も注目されています。信託を利用することで、相続発生前から計画的に財産の承継を進めることができ、国際相続特有の問題を回避できる場合があります。

まとめ

国際相続では、日本と海外の法律の違いを正確に理解し、準拠法を適切に判断することが最も重要です。日本は統一主義を採用し被相続人の本国法を適用する一方、アメリカやイギリスなどは分割主義を採用しているため、同じケースでも国によって異なる判断がなされることがあります。

2024年の相続登記義務化により、外国人を含むすべての相続人が3年以内の登記申請を求められるようになりました。また、相続税の10年ルールや必要書類の取得など、国際相続特有の課題も多岐にわたります。

国際相続を円滑に進めるためには、遺言書の事前作成、専門家への早期相談、そして最新の法改正への対応が欠かせません。外国人が日本で不動産を相続する際の基礎知識については、外国人の日本不動産相続の基礎知識もあわせてご確認ください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本不動産購入情報を発信。

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