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相続・贈与と不動産

相続放棄と不動産の取り扱い

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
相続放棄と不動産の取り扱い

外国人が日本で不動産の相続放棄をする際の手続き、期限、管理義務、2024年の法改正ポイントを詳しく解説。3ヶ月の申述期限、海外在住者の注意点、相続土地国庫帰属制度など、知っておくべき重要情報をまとめています。

相続放棄と不動産の取り扱い|外国人が知っておくべき手続きと注意点

日本で不動産を所有する外国人にとって、相続は避けて通れない重要なテーマです。特に、相続財産に多額の負債が含まれていたり、管理が難しい不動産が含まれている場合、相続放棄という選択肢が重要になります。相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を一切引き継がないことを法的に宣言する手続きです。

しかし、相続放棄をしても不動産に関する責任が完全に消えるわけではありません。2023年の民法改正や2024年の相続登記義務化など、法制度は年々変化しています。本記事では、外国人が日本で相続放棄をする際の手続き、不動産の取り扱い、そして注意すべきポイントを詳しく解説します。

相続放棄とは?基本的な仕組みを理解する

相続放棄とは、民法に基づき、相続人が家庭裁判所に申述することで、被相続人の財産(プラスの財産もマイナスの財産も含む)を一切引き継がないことを法的に確定させる手続きです。

相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。つまり、不動産や預貯金などのプラスの資産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの負債も一切引き継ぎません。

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相続放棄を検討すべき主なケースは以下の通りです:

  • 被相続人の負債が資産を上回っている場合
  • 相続した不動産の管理が困難な場合(遠方にある、老朽化している等)
  • 他の相続人に財産を集中させたい場合
  • 相続に関わるトラブルを避けたい場合

なお、外国人であっても日本に財産がある場合は、日本の家庭裁判所で相続放棄の手続きが可能です。ただし、被相続人の本国法に相続放棄の制度が存在することが条件となります。

相続放棄の手続きと期限|3ヶ月以内のルール

相続放棄の手続きには厳格な期限があります。相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出する必要があります。

手続きの流れ

  1. 相続開始の確認:被相続人の死亡を知った日が起算日となります
  2. 財産・負債の調査:3ヶ月以内に相続財産の全容を把握します
  3. 申述書の作成:家庭裁判所に提出する書類を準備します
  4. 家庭裁判所への申述:管轄の家庭裁判所に書類を提出します
  5. 照会書への回答:裁判所からの質問に回答します
  6. 受理通知書の受領:相続放棄が正式に認められます

必要書類一覧

書類名取得先備考
相続放棄申述書裁判所ウェブサイト所定の書式に記入
被相続人の住民票除票市区町村役場最後の住所地のもの
被相続人の戸籍謄本市区町村役場死亡の記載があるもの
申述人の戸籍謄本市区町村役場現在のもの
収入印紙(800円)郵便局・コンビニ申述人1人につき
郵便切手郵便局裁判所により金額が異なる
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海外在住の外国人の場合は、上記に加えて在留証明書(在外公館で取得)が必要になることが多いです。また、海外からの相続放棄手続きでは、代理人を立てることも可能です。

相続放棄後の不動産はどうなる?管理義務の最新ルール

相続放棄をしたからといって、不動産の問題がすべて解決するわけではありません。ここで重要になるのが、相続放棄後の管理義務(保存義務)です。

2023年民法改正のポイント

2023年4月の民法改正により、相続放棄後の管理義務に関するルールが変更されました。改正前と改正後の違いは以下の通りです:

項目改正前(2023年3月まで)改正後(2023年4月以降)
義務の名称管理義務保存義務
義務が発生する条件次の相続人に引き渡すまで現に占有している場合のみ
注意義務の程度自己の財産と同一の注意自己の財産と同一の注意
義務の範囲相続財産全体占有している財産のみ

この改正により、相続放棄の時点で不動産を実際に占有していなければ、管理義務を負わないことが明確化されました。これは外国人相続人にとって特に重要な変更点です。海外に住んでいて日本の不動産を占有していなければ、相続放棄後に管理義務が発生しない可能性が高くなりました。

ただし、相続放棄前に実際にその不動産に居住していた場合や、事実上管理を行っていた場合は、引き続き保存義務を負うことになります。

相続登記の義務化と外国人への影響(2024年法改正)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。この法改正は外国人相続人にも適用される重要な変更です。

主な変更点

  • 相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務
  • 正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性
  • 外国人の場合、不動産登記においてローマ字氏名の併記が必須に(2024年4月1日施行)
  • 海外に居住している相続人も例外なく適用

外国人が相続放棄をする場合、相続放棄が認められれば相続登記の義務は発生しません。しかし、相続放棄の手続き中や、放棄が認められなかった場合に備えて、この義務化の内容を理解しておくことが重要です。

相続に関連する税金や法制度の詳細については、不動産にかかる税金ガイドも合わせてご確認ください。

外国人特有の注意点と準拠法の問題

外国人が日本の不動産の相続放棄をする場合、日本人とは異なる特有の注意点があります。

準拠法の問題

国際私法上、相続に関しては被相続人の本国法が適用されるのが原則です(法の適用に関する通則法第36条)。しかし、以下のケースでは日本法が適用される可能性があります:

  • 被相続人の本国法に「最後の住所地法に従う」という規定がある場合
  • 被相続人が日本国籍を有している場合
  • 被相続人の最後の住所が日本にあった場合(本国法に反致がある場合)

重要なのは、被相続人の本国法に相続放棄という制度がなければ、原則として相続放棄はできないという点です。ただし、実務上は日本の裁判所が柔軟に対応するケースもあります。

海外在住者の手続き上の注意

海外在住の外国人が相続放棄をする場合の実務的な注意点は以下の通りです:

  • 3ヶ月の期限:海外にいても期限は延長されないのが原則(ただし、裁判所に期間伸長の申立てが可能)
  • 在留証明書:在外公館(大使館・領事館)で取得が必要
  • 代理人の選任:日本の弁護士や司法書士に委任することが推奨
  • 書類の翻訳:外国語の書類には日本語訳を添付する必要がある

在留資格と不動産購入の関係については、在留資格・ビザと不動産購入をご覧ください。

相続放棄できない場合の代替手段

相続放棄の期限を過ぎてしまった場合や、プラスの財産も引き継ぎたい場合は、以下の代替手段を検討できます。

限定承認

限定承認とは、相続財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ手続きです。プラスの資産がマイナスの負債を上回っていれば差額を引き継げ、負債の方が多ければプラスの資産の範囲で弁済すれば済みます。ただし、相続人全員で行う必要があり、手続きが複雑です。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月に開始された相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に返すことができる制度です。

項目内容
対象相続または遺贈により取得した土地
費用審査手数料14,000円+負担金(1筆あたり原則20万円)
条件建物がないこと、担保権がないこと、境界が明らかであること等
申請先法務局
処理期間半年〜1年程度

この制度は相続放棄とは異なり、一部の土地だけを国に帰属させることができるため、不要な土地のみを手放したい場合に有効です。

不動産の売却という選択肢もあります。詳しくは不動産売却ガイドをご参照ください。

相続放棄と不動産に関するよくある質問

Q: 相続放棄をしても固定資産税の請求が来ることはありますか?

はい、可能性があります。相続放棄が認められても、市区町村の税務課が相続放棄の事実を把握するまでに時間がかかることがあります。請求が届いた場合は、相続放棄受理通知書の写しを市区町村に提出することで対応できます。

Q: 相続放棄をした後でも不動産を売却できますか?

いいえ、できません。相続放棄をした時点で、その不動産に対する一切の権利を失います。また、相続放棄前に不動産を売却したり処分したりすると、法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなります。

Q: 全員が相続放棄をした場合、不動産はどうなりますか?

全相続人が相続放棄をした場合、最終的に不動産は国庫に帰属します。ただし、自動的に国のものになるわけではなく、相続財産管理人(相続財産清算人)の選任が必要です。選任には家庭裁判所への申立てが必要で、予納金として数十万円〜100万円程度かかることもあります。

Q: 被相続人が外国人の場合、日本の不動産はどうなりますか?

被相続人が外国人であっても、日本に不動産がある場合は日本の法律に基づいて手続きが行われます。相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で行います。

まとめ|相続放棄は慎重な判断と早めの行動が大切

相続放棄は、不要な負債や管理困難な不動産を引き継がないための有効な手段です。しかし、3ヶ月という厳格な期限があり、一度放棄すると撤回できません。

外国人が日本の不動産に関して相続放棄を検討する際のポイントをまとめます:

  1. 期限の確認:相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きを完了させる
  2. 管理義務の確認:2023年改正により、占有していない不動産は管理義務が軽減された
  3. 相続登記義務化への対応:2024年4月から3年以内の登記が義務に
  4. 準拠法の確認:被相続人の本国法に相続放棄制度があるか確認する
  5. 専門家への相談:弁護士や司法書士など、国際相続に詳しい専門家に早めに相談する

相続問題は放置するほど複雑化します。早めの対応が、スムーズな解決への第一歩です。相続・贈与と不動産についての詳しい情報も、あわせてご確認ください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本不動産購入情報を発信。

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