日本の年金制度と外国人の加入義務

日本に住む外国人が知っておくべき年金制度の基礎知識を徹底解説。国民年金・厚生年金の加入義務、脱退一時金の申請方法と金額、社会保障協定による二重払い防止、保険料免除制度まで、わかりやすくまとめています。
日本の年金制度と外国人の加入義務
日本に住む外国人にとって、年金制度への加入は避けて通れない重要なテーマです。「自分の国に帰るのに、なぜ日本の年金を払わなければならないのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。しかし、日本の年金制度は国籍に関係なく加入が義務付けられており、制度を正しく理解することで将来の生活設計に大きく役立ちます。本記事では、外国人が知っておくべき日本の年金制度の仕組み、加入義務、そして帰国時に利用できる脱退一時金制度について詳しく解説します。
日本の年金制度の基本構造
日本の公的年金制度は「2階建て」の構造になっています。1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金保険です。この仕組みを理解することが、外国人にとっても年金制度を活用する第一歩となります。
国民年金(基礎年金)は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。自営業者、フリーランス、学生、無職の方が対象で、毎月定額の保険料を納付します。2024年度の保険料は月額16,980円です。
厚生年金保険は、会社員や公務員など、企業に雇用されている人が加入する制度です。保険料は給与に応じて決まり、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。厚生年金に加入すると、国民年金にも自動的に加入したことになるため、将来受け取れる年金額が多くなります。
| 項目 | 国民年金(基礎年金) | 厚生年金保険 |
|---|---|---|
| 対象者 | 20歳以上60歳未満の全住民 | 会社員・公務員 |
| 保険料 | 定額(月額16,980円/2024年度) | 給与の約18.3%(労使折半) |
| 受給開始年齢 | 原則65歳 | 原則65歳 |
| 受給資格期間 | 10年以上 | 10年以上(国民年金と通算) |
| 加入手続き | 市区町村の窓口 | 事業主が届出 |
| 外国人の加入 | 義務 | 義務(雇用されている場合) |
詳しい税制面での情報は「不動産にかかる税金ガイド」もあわせてご覧ください。
外国人の年金加入義務と対象者
日本の年金制度は、国籍に関係なく加入が義務付けられています。在留期間が3ヶ月以上の外国人は、住民登録を行った時点で国民年金または厚生年金への加入が必要です。これは日本年金機構の公式サイトでも明記されています。
加入が必要な外国人
以下の条件に該当する外国人は、年金への加入が義務です。
- 会社員として働く外国人:厚生年金保険に加入(事業主が手続き)
- 自営業・フリーランスの外国人:国民年金に加入(自分で市区町村窓口にて手続き)
- 留学生:20歳以上であれば国民年金に加入(学生納付特例制度の利用可能)
- 配偶者ビザで日本在住の外国人:国民年金に加入(厚生年金加入者の配偶者は第3号被保険者として保険料免除の場合あり)
在留資格と不動産購入の関係については「在留資格・ビザと不動産購入」で詳しく解説しています。
加入手続きの流れ
会社員の場合は事業主が手続きを行いますが、自営業やフリーランスの外国人は自ら市区町村の窓口で加入手続きを行う必要があります。手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 在留カード
- パスポート
- マイナンバー通知書またはマイナンバーカード
- 届出書(窓口で入手可能)
2024年には、厚生労働省が移住外国人の年金加入を徹底する方針を発表しました。日本年金機構が住民基本台帳の情報を活用し、外国人の加入漏れを防ぐ仕組みの構築が進められています(日本経済新聞)。
年金保険料の免除・猶予制度
外国人であっても、日本人と同様に保険料の免除や猶予を受けることができます。収入が少ない場合や経済的に困難な場合は、以下の制度を活用しましょう。
保険料免除制度
前年の所得が一定額以下の場合、保険料が全額免除または一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)されます。免除期間も年金受給資格期間に算入されるため、将来の年金受給に影響します。
学生納付特例制度
留学生など学生の外国人は、本人の所得が一定以下であれば保険料の支払いが猶予されます。この期間は受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。後から追納(10年以内)することで、満額の年金を受け取ることが可能です。
産前産後期間の免除
出産予定日の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は出産予定日の3ヶ月前から6ヶ月間)の保険料が免除されます。この期間は保険料を納めたものとして扱われます。
資金計画の全体像については「資金計画と頭金の準備」も参考にしてください。
脱退一時金制度の仕組みと申請方法
外国人が日本を離れる際に最も重要となるのが脱退一時金制度です。これは、日本の年金に加入していた外国人が帰国する際に、納めた保険料の一部を払い戻してもらえる制度です(日本年金機構・脱退一時金)。
脱退一時金の支給要件
脱退一時金を受け取るには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 日本国籍を持っていないこと
- 公的年金制度の被保険者でないこと(日本を離れていること)
- 保険料納付済期間が6ヶ月以上あること
- 老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
- 障害年金等の受給権を有していないこと
- 資格喪失から2年以内に請求すること
脱退一時金の金額
脱退一時金の計算には、加入期間に応じた支給額が決められています。2021年4月より、計算に用いる年数の上限が3年から5年に引き上げられました。さらに、2025年の年金改正では5年から8年への引き上げが検討されています。
| 加入期間 | 国民年金の脱退一時金(概算) | 厚生年金の脱退一時金 |
|---|---|---|
| 6ヶ月〜12ヶ月 | 約50,000円 | 給与額により変動 |
| 12ヶ月〜18ヶ月 | 約100,000円 | 給与額により変動 |
| 18ヶ月〜24ヶ月 | 約150,000円 | 給与額により変動 |
| 24ヶ月〜36ヶ月 | 約200,000円 | 給与額により変動 |
| 36ヶ月〜48ヶ月 | 約250,000円 | 給与額により変動 |
| 48ヶ月〜60ヶ月 | 約300,000円 | 給与額により変動 |
厚生年金の脱退一時金は、平均標準報酬額に支給率(被保険者期間に応じた率)を乗じて計算されるため、個人の給与額によって大きく異なります(マイナビグローバル)。
申請手続きの流れ
- 転出届を提出:住んでいる市区町村に転出届を提出
- 日本を出国:出国後に申請が可能になる
- 請求書を提出:日本年金機構に「脱退一時金請求書」を郵送
- 振込先口座の指定:海外の銀行口座を指定
- 入金を待つ:通常4〜6ヶ月で振り込まれる
重要な注意点:脱退一時金を受け取ると、それまでの加入期間がリセットされます。将来再び日本で働く可能性がある場合は、脱退一時金を請求せず、加入期間を維持する選択肢も検討しましょう。
また、脱退一時金には20.42%の所得税が源泉徴収されます。ただし、税務代理人を選任して確定申告を行えば、還付を受けられる場合があります。確定申告について詳しくは「外国人の確定申告と不動産所得」をご参照ください。
社会保障協定と二重加入の防止
日本は多くの国と社会保障協定を締結しており、年金保険料の二重払いを防止する仕組みがあります。この協定は、外国人が日本で働く場合に非常に重要な役割を果たします(外国人労働者の厚生年金加入について)。
社会保障協定の対象国
2024年時点で、日本は以下の国々と社会保障協定を締結しています。
- ヨーロッパ:ドイツ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ハンガリー、スイス、ルクセンブルク、イタリア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン
- 北米:アメリカ、カナダ
- アジア・オセアニア:韓国、中国、オーストラリア、インド、フィリピン
- 南米:ブラジル
協定の主な効果
- 二重加入の防止:派遣期間が5年以内の場合、派遣元国の年金制度のみに加入し、日本の年金保険料の支払いが免除される
- 加入期間の通算:両国の年金加入期間を通算して受給資格を判断できる(一部の協定のみ)
- 年金の受給:通算した期間に基づき、それぞれの国から年金を受給できる
二重課税の問題については「二重課税防止条約と不動産所得」でも詳しく解説しています。
外国人が年金を受給する場合
日本の年金制度に10年以上加入した外国人は、老齢年金を受給する権利があります。これは日本に住んでいなくても、海外から年金を受け取ることができます。
受給の条件
- 国民年金・厚生年金の加入期間が合計10年以上
- 65歳に達していること(繰り上げ受給は60歳から可能)
- 社会保障協定による加入期間の通算が適用される場合あり
海外からの年金受給手続き
- 裁定請求書の提出:日本年金機構に年金請求書を提出
- 生存確認:年1回、在外公館等で「現況届」を提出
- 振込口座:日本国内または海外の銀行口座を指定可能
- 税金:非居住者の場合、年金から20.42%の所得税が源泉徴収される(租税条約により免除される場合あり)
長期的に日本で生活する方は「永住権と住宅購入」も参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 短期滞在の外国人も年金に加入しなければならないですか?
在留期間が3ヶ月未満の短期滞在者は年金加入の義務はありません。ただし、3ヶ月以上の在留資格を持つ外国人は、滞在目的に関わらず加入義務があります。
Q2. 年金を払わないとどうなりますか?
未納が続くと、督促状が届きます。長期間未納の場合は財産の差し押さえが行われる可能性があります。また、在留資格の更新審査で年金の納付状況が確認される場合もあるため、未納は在留に影響を及ぼす可能性があります。
Q3. 脱退一時金を受け取った後、再来日した場合はどうなりますか?
脱退一時金を受け取ると加入期間はリセットされるため、再来日して年金に加入する場合は、ゼロから加入期間が始まります。将来的に日本での長期滞在を考えている場合は、脱退一時金を請求しない方が有利な場合もあります。
Q4. 配偶者が日本人の場合、年金はどう扱われますか?
日本人の配偶者で厚生年金加入者の扶養に入る場合は、第3号被保険者として国民年金に加入します。この場合、保険料の自己負担はありません。配偶者ビザでの生活については「配偶者ビザと住宅購入の手続き」もご覧ください。
Q5. 年金手帳は必要ですか?
2022年4月以降、年金手帳は廃止され、基礎年金番号通知書が発行されるようになりました。すでに年金手帳をお持ちの方はそのまま使用できます。基礎年金番号は各種手続きに必要ですので、大切に保管してください。
まとめ
日本の年金制度は外国人にとって複雑に感じられるかもしれませんが、正しく理解し活用することで、将来の生活を支える重要な制度となります。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 在留期間3ヶ月以上の外国人は年金加入が義務
- 国民年金と厚生年金の2種類があり、働き方によって加入先が異なる
- 帰国時には脱退一時金を申請できるが、加入期間がリセットされる点に注意
- 社会保障協定を活用すれば、二重払いを避けられる
- 10年以上加入すれば、海外からでも老齢年金を受給可能
日本での生活や不動産購入を検討している外国人の方は、年金制度を含めた社会保障全体を理解しておくことが大切です。日本の医療制度と健康保険や日本での暮らしと生活環境とあわせて、日本での生活基盤をしっかり整えていきましょう
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